スタイル名に「アメリカン」と入っているので、バリバリの柑橘系を期待される方もいらっしゃるかも知れませんが、柑橘系アメリカン・ホップの代表であるカスケード(今となってはクラシックと呼んでも良いかも知れません)が持て囃されるようになったのは割りと最近のことのようです。 (ちなみにカスケードホップをノーブルホップと紹介しているブルワリーもありますが、一般的にはノーブルホップに含みません) カスケードホップが世に出た1970年代までアメリカ産ホップと言えばクラスターホップやノーザンブルワー等数種類しか無かったようです。 これは現代のアメリカンホップとは違い柑橘系と呼ばれるホップではありません。
当然ながらCAPにもこれらのホップが使われていたと想像するに易しいのですが、スチームビールに使われるノーザンブルワー(これは佐倉スチームにも使っています)は禁酒法(1920年〜1933年)の後になる1934年にイギリスで交配された種だとわかっています。 つまり禁酒法以前にノーザンブルワーは存在しておらず、当時のアメリカで現地栽培のホップを使うとしたらほぼクラスター・ホップ以外選択肢は無かったものと思われます。
一方で、CAPには移民がヨーロッパから持ち込んだノーブル・ホップが使われていたと言う説もあります。 19世紀後半の1870年代にはすでにワシントン州のヤキマでホップの栽培がされていたそうなのですが、ヨーロッパのノーブル種が栽培されていたかどうかは定かではありません。 クラスター・ホップですら、ヨーロッパから持ち込んだホップの雌株とアメリカ原産の雄株の交配でできた種だと言われているので、純粋なノーブル種が栽培されていたとは考えにくいでしょう。 もし本当に使われていた事実があるのならそれは祖国から持ち込まれたホップだったのではないでしょうか。
ここからは完全なる想像なのですが、主要な部分は現地で入手可能なホップを使用し、 最後に祖国から持ち込んだ虎の子のホップを入れ、祖国の味を再現しようと試みたのではないでしょうか。 でき上がったビールのアロマから飲むたびに遠い祖国を偲んでいたのではないでしょうか。
そんなノスタルジックな味わいを出せるよう、今回のレシピではクラスターホップに加えてアロマ付けにドイツ産ノーブル種であるハラタウ・ミッテルフルーを加えました。 (「当時ハラタウ・ミッテルフルーは無かっただろう」という突っ込みはご勘弁を)
出来上がりを飲んだ感じではフローラルなクラスターのフレーバーにマイルドで心地よいミッテルフルーが加わった、ちょっと他にはなさそうな仕上がりとなりました。 これが当時の人が飲んだCAPのフレーバー&アロマなのかはわかりませんが機会がございましたら是非お試し下さい。
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