2014年02月22日

60シリングが珍しい理由

現在出荷中のスコティッシュ・ライト・60シリング「スコティッシュ\220-」は飲んでいただけましたか?たぶん本場に行かない限り、日本でこのスタイルのビールを飲める機会はなかなか無いと思いますので、見つけたら是非一度お試し下さい。

先日のJBCF2014でお披露目した時からビールマニアの方々より「珍しい」とか「マニアックすぎる」とか味云々よりもスタイルそのものに対するコメントを多数いただきました。FB担当自身も「まず他社さんは造りません」と宣伝していますがその理由を書きたいと思います。

スコットランドを代表するエールには大きく分けてスコティッシュ・エールとスコッチ・エールがあります。「スコティッシュ」も「スコッチ」も同じような意味で「Scottish」を引くと「=Scotch」なんて書いてある辞書もあるくらいです。しかし、ビールに関して言うとスコッチ・エールは別名ウィ・ヘヴィと呼ばれるスコットランド風高比重ビールを指すのに対して、スコティッシュ・エールはそれよりは軽いエールを指します。

BJCPのスタイルガイドラインによるとスコティッシュ・エールは軽いものから順に以下の3種類あります。
・スコティッシュ・ライト60/-
・スコティッシュ・ヘヴィ70/-
・スコティッシュ・エクスポート80/-
スタイルにある「nn/-」は「nnシリング」の意味で、かつてビールの強さによって値段が決まっていた名残だそうです。今回、ロコビアで仕込んだスコティッシュ・エールは最も軽い60シリングと呼ばれるもの。BJCPのスタイルガイドラインによれば、

OG:1.030-1.035、FG:1.010-1.013、IBUs:10-20、SRM:9-17、ABV:2.5-3.5%

と色以外全てが低いレベルにあるエールだということがわかります。アルコールが低いのでビンやカン等での流通には向かずパブでの提供がメインとなります。これはイングランドの「マイルド」と同様、本場スコットランドでもカスクで提供されるだけのようです。このためスーパーなどには並ぶことは無いので、仮にスコットランドに行っても目にする機会はそれほど多くないと思われます。これがマイナーなスタイルになっている大きな要因でしょう。

また全てが低レベルであるということは主張するものが無く「ウリ」となる部分が見えにくいということです。IPAなら「柑橘系ホップがガツンと利いた…」とか魅力的な宣伝文句がいくつも出てくるのに対して、スコティッシュライトを売ろうとしても「本場スコットランドの…」と言ったような言葉しか思い浮かばず(FB担当のコピーライト能力の低さも手伝って)商業的には売りにくい製品となります。

さらにこのスタイルはブルワリーの技量も試されます。IPAとかフルーツビールなら大量に投入するホップや果物が他のアロマやフレーバーをマスクしてくれるので、多少のオフフレーバーは問題とならない場合が多々あります。しかしスコティッシュライトのような全てが低レベルでバランスするようなスタイルでは、僅かなオフフレーバーが製品全体に影響してしまい、大きな問題となります。
(これはケルシュと共通する特徴なので、長年ケルシュを造り続けている当ブルワリーの最も得意とするところです。)

以上をまとめると、非常にマイナーなスタイルで特徴が無く商業的に成功するか分からない上、技術的にもハードルの高いスタイルと言うことになります。経営者の立場なら、いくら現場のブルワーが「造りたい」と行ってもゴーサインを出すのは躊躇しそうですよね?これがFB担当が他社が作らないだろうと思っている理由です。

「それじゃ、ロコビアは経営のことを考えていないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなことはありません。むしろこう言うスタイルを造ることこそロコビアの使命でありミッションとして掲げている「本当のビール味を届ける」が意味するところなのです。

商業的に難しいビール、技術的に難しいビール等々、まだまだ知られていないスタイルが沢山あります。時間はかかるかも知れませんが、ひとつでも多くの未知なるビールを皆さまにお届けできたら良いなと考えています。

【追記】
検索をかけてみると、以前ベアードさんでもスコティッシュ・エールを造ったことがあるようです。
http://bairdbeer.com/ja/blog/archives/2101
彼らの言うところの40/-は19世紀のスコティッシュ・エールでの強さの表記を使っているようで、BJCPが定義している表記とはズレがあり、この製品がここで言うところの60/-よりも弱いということはありません。
posted by FB担当 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | レシピ
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