2016年08月28日

一年前を振り返って

ちょうど一年前の8月28日、一関のビアフェスに向かう途中で事故に遭いました。 FaceBookには事故の報告とドタキャンのお詫びを掲載したのですが、気持ちの整理も付かなかったこともありブログでこの件に触れることはありませんでした。

あの日、対面通行の国道を走っていたところ、突然対向車がセンターラインを超えてこちらに突っ込んできました。 晴天の霹靂とはまさにこう言うことを言うんだろうなと思うくらい突発的な出来事でした。 事故直後、ことの重大さを認識できず「どうやって一関まで行こう?」とまず頭に浮かんだことを今でもハッキリと覚えています。

あれから一年。 一時は集中治療室入っていた「ちびっ子1号」も今では事故に遭ったのがウソのように元気に回復しました。 今振り返ってみるとアッという間だったようにも思えるし、やっとかと言う感じもあります。 示談や裁判もまだ終わっていないこともあり、完全に気持ちの整理が付いたという訳でもありません。

でも、ひとつだけハッキリと言えることは、加害者も含めて全員生きていて良かったなと言うこと。 誰か一人でも欠けていたら、もっと後味の悪い結果になっていたことは想像に難くありません。

先週、2年ぶりに一関のイベントに出店でき、懐かしいような嬉しいようなホッとした気持ちになりました。 帰りには「ちびっ子1号」を手術して下さった先生達にもご挨拶することも出来、また来年も参加するぞ思いながら帰ってきました。

来年には完全に気持ちの整理が付いていることを願いつつ、一年前を振り返った一日でした。
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2016年08月25日

ブレタノマイセス味比べ

先月はロサンゼルス&サンディエゴに行っていたため欠席した勉強会。 今月はその旅行で買ってきたブレタノマイセスを使ったビールの味比べというテーマで開催しました。

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使ったビールはBrueryのELEMENTS OF FUNKシリーズの三種類。 写真は左からBrettanomyces ClausseniiBrettanomyces LambicusBrettanomyces Bruxellensisを使ったビールです。

ブレタノマイセスはバクテリアと誤解されている節があるようですが実際はイースト属だそうで、普通に使われる醸造用イーストの近縁種です。 知られているブレタノマイセスは四種類あるそうで、その中でもビール醸造に良く使われるのはBrettanomyces Anomalus(別名Brettanomyces Claussenii)とBrettanomyces Bruxellensis(別名Brettanomyces Lambicus)二種類とのこと。 別名と言うのは以前は違う種だと思われていたものが実は同じ種だったと判明したからの様で、醸造用イーストであるSaccharomyces Cervisiaeにもクリーンなアメリカン・イーストや独特なベルジャン・イーストがあるのと同様の違いでしか無いようです。

今回のテイスティングはスコアシートを付けると言うことはせず、単なる飲み比べでブレタノマイセスの違いを楽しもうという形で行いました。 ちょっとしたテイスティングメモ。

Brettanomyces Claussenii
ブレタノマイセスの香りが強い。 モルティなフレーバーでホップのキャラクターを感じる。

Brettanomyces Lambicus
華やかなでトロピカルフルーツを思わせる香り。 フェノールが少々強めに出ており、除光液のフレーバーも感じる。

Brettanomyces Bruxellensis
ブレタノマイセスの香りは一番弱く、落ち着いた感じがする。 ドライな感じと少し酸味。 ホップの渋味も感じる。

スコアシートをきちんと付けなかったのもあるのですが、全くと言って良いほど飲み慣れていないので違いを表現するのがとても難しく感じました。 ブレタノマイセスを使ったビールの評価が出来るようになるまでには暫く時間がかかりそうです。
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2016年08月01日

ユーカリナーヴァイス醸造裏話

今年に入って2バッチ目のサワーエールとなる「ユーカリナーヴァイス」が発売となりました。

酸っぱいビールなら何でも「サワーエール」と言えるのですが作り方は多種多様であり、大きく分けて三つの製造方法があります。 それぞれの方法とその特徴を簡単にまとめると下記の通りです。
  1. 酸を直接投入する方法
    乳酸やクエン酸を直接ビールに添加
    【長所】非常に簡単にできる
    【短所】味が単調で深みが出ない
  2. 主発酵の前に酸味を付ける方法
    麦汁の段階で酸味を付けパスチャライズの後、通常発酵
    【長所】比較的手軽にでき汚染の心配がない
    【短所】低いpHで糖化や主発酵を行うため問題が出る可能性
  3. 主発酵の後に酸味を付ける方法
    発酵の際あるいは後で乳酸菌等を投入
    【長所】とても味わいの深い酸味が出せる
    【短所】出来上がりに時間がかかり、他製品への汚染のリスクも高い
3月に仕込んだ「Pink Boots Gose」はアシッドモルトを使って酸味を加えたので、1の手法に相当すると考えられます。

一方で今回の「ユーカリナー・ヴァイス」は2の方法のひとつであるケトルサワーリングと言う手法で醸造しました。 この方法については結構細かい手順をうしとらの植竹氏が公開しているので興味のある方は下記のリンクをご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/other_then_beer/archives/1054814288.html

ケトルサワーリングやサワーマッシングでは長くても48時間程度しかサワーリングに費やさないため、基本的に乳酸菌(ラクトバシルス)しか働きません。 そのため乳酸菌選びが結構重要です。 そう言う意味ではヨーグルトや純粋培養の乳酸菌を使うのが無難なのかも知れませんが、今回はオリジナルのベルリナーヴァイスに近づけるため麦芽に付いている乳酸菌を使うことにしました。

ラクトバシルスにはホモ発酵性とヘテロ発酵性を示すものがあります。 ホモは乳酸しか作らないのに対しヘテロでは乳酸意外に複数の副生成物を作るという違いがあります。 ホモを使った場合せっかく乳酸発酵をさせても乳酸しか出来ないので、1の方法で乳酸を加えたものと大きく変わらないと思われます。

一方、ヘテロを用いれば副生成物が味に深みを与えてくれることが期待でき、単に乳酸を加えた場合に比べて(美味いか不味いかは別にして)複雑な味になることが期待できます。 ホモかヘテロの判定は、乳酸発酵の段階で炭酸ガスが発生するかしないかで区別できるので、乳酸菌の“スターター”を作る際に炭酸ガスが出る乳酸菌を選べば良いのです。

こうして出来上がったのが今回の「ユーカリナーヴァイス」です。 出来上がりのpHが3.11とかなり低い値を示していますが、副生成物のお陰か、それほど強い酸味を感じない仕上がりとなりました。 本場ベルリンではシロップを混ぜて飲むのが一般的と言われている様ですが、「ユーカリナーヴァイス」はそのままでも十分に飲める爽快な酸味ですので、ぜひ一度ご賞味下さい。

次回は是非とも3の方法で作ったサワーに挑戦してみたいと思っています。 しかし、現状でこの方法を採用すると汚染により「香りの生」まで酸っぱくなってしまうリスクが高く、すぐに造ることはちょっと難しそうです。 先日ロサンゼルス&サンディエゴで色々と見学させてもらった感じでは、クリーンな醸造所とサワーの醸造所は完全に分けるのがトレンドの様でした。 しかしそこまで投資するのは零細ブルワリーにはかなり厳しいのが現状です。
posted by FB担当 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 醸造技術